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私の吃音卒業人生4

はじめに
山桜さんの「70歳手前での吃音卒業(完治)」 




吃音を治すあらゆる努力をやってこられた60歳台の山桜さん.お便りをいただき始めてから3年あまり,どうしても治らなかった吃音で 「とても今生での吃音克服は無理」という結論にさえ達していたようでした.が,それから短期間の間に訳の分からないままに言葉がスムーズに出るようになって,本物の吃音卒業を迎えられたようです.

本研究所では,大人の吃音が治っている現状から「吃音は年齢に関係なく治る」といってきましたが,ここまで高齢で劇的に治られた方を,この目で見たのは初めてです.これによって,吃音は年齢に関係なく,たとえ高齢であっても治る病気であること,吃音トラウマさえ取れれば治る病気であることがますます確実になりました.

「言葉が出だした」とお知らせをいただいたとき,研究所としては,これまで考えることもできなかった新事実が出てくるかと期待と好奇心などで前のめりになりましたが,「吃音ドットコム」でいう吃音の「本質をズバリと示す」ことが起こっていました.

卒業2年後,4年後にも経過情報をいただきましたので,吃音とは何者であるのか?,トラウマがなんであったのか,吃音とはどうなれば治るのか?,卒業後の経過はがよくわかる,非常に需要な,非常にまれな,非常に貴重な,7年間の吃音相談中に起こったライブな情報です. ここには吃音の総てが表れています.

山桜さんは 「 魔法使いに吃音にされた人間の魔法が解けたみたいです」とおっしゃっています.



この体験談の結果から,吃音に関する有用な知見として,次のようなことが言えます.

 1. 何歳になっても吃音は完全に治るということ
 2. 完全に治るためには吃音トラウマを取りのぞくことが必要
    2.1 そのためには,吃音トラウマが何かを特定すること
    2.2 吃音トラウマを取りのぞく手段を考えること
    2.3 2.2で見つけた手段を実行し,吃音トラウマを取りのぞくこと
 3. 吃音改善(克服)は吃音トラウマを小さくすることによりなされていること

吃音トラウマは,家族やその先祖,本人の心の資質が関係している幼児期(主に)の状況に関係しているので,特定も難しく取り除くのも結構大変そうですが,できないことではありません.

これまではこういう基本がわかってなかったので試行錯誤の連続でしたが,これからは少し楽になりそうです.

「吃音ドットコム」では,割り切って単純化して言えば,「吃音は主に2歳の前半に吃音トラウマが宿ることによって2歳の後半に発症し,吃音トラウマを取り去ることで治る病気」であるといっています.吃音トラウマには吃音発症の原因になった「吃音発症時トラウマ」と吃音発症後宿った「吃音発症後トラウマ」があります.吃音発症時トラウマは幼児期の不適切な発育環境から発生し,「吃音発症後トラウマ」は主に吃ることによって社会から降りかかるストレス(不適切な生活環境)によるものです.

吃音は2歳の後半に発症するのがほとんどですのでどうしても育児環境が関係してきます.70年もたってからの結果が,そういうことを納得させてくれる体験談になっています.幼児期のたった半年余りが70年以上影響を与え続けるというすごいことを表しています.驚くべきことですが,まあ,幼児期に覚えた言葉を一生使い続けることを考えるとそんなに特殊なことではないのですが.でも前者は悪影響,後者は好影響です.妊娠中お母さんが細心の注意を払い続けるつぎに重要な期間が,乳幼児期だということを表しています.この時期の重要性を表すために「心の妊娠期」と表現しています.

これまでの吃音完治者は「いつの間にかスラスラ話していた」というのが一般的でした.「治ってしばらくしてから気がついた」ということですので,吃音完治の原因を特定するのが難しい傾向がありました.しかし,今回は吃音相談中でしたので,吃音トラウマが消えた環境変化と言葉がスムーズにでてきた瞬間(吃音卒業)の相関が明確に分かる出来事となりました.また,吃音卒業後の様子も分かってきました.
 山桜さんのようにしっかりした方だからできた貴重な体験談です.HK吃音理論や幼児の吃音を頭に浮かべながら読むとより理解が深まり,納得されるはずです.



7年間以上に及ぶメールのやり取りで全体が相当長くなっていますので,吃音卒業の第一報から重要なところを3部に分けてまとめます.目次欄の「吃音卒業人生」→「70歳で吃音卒業」からいけます.
「吃音ドットコムJR」のような外部サイトから直接来られた方は,まず,ここ「吃音.com」 Top Pageへアクセスの上,目次欄からアクセスしてください.

「4-1」 山桜さん・吃音卒業の瞬間」
    として「卒業の瞬間」を最初に挙げておきます.
    次に続く章では
「4-2」 山桜さん・吃音卒業の科学的解説と考察」
    として山桜さんの吃音について,今後の参考になるようにHEROが科学的に考察し解説します.
    次の章では
「4-3」 山桜さん・吃音卒業までのタイムライン」
    として7年間のメールのやり取りを,全てそのまま載せさせていただきます.
    「大人の吃音サイクル」をリアルで示す初めての超々貴重な情報です.

Hero   (2020/05/01.2023/03/20)


山桜さんの70年弱の吃音歴を超々々々簡単にまとめておきますと以下のようです.


    ● 初めての連絡(2016/07/27 66歳)


  1. 吃音ドットコムを知り、迷ったら訪れるを繰り返しています

    初めて連絡致します。
    2007年位に吃音ドットコムのサイトを知り、迷ったら訪れることを繰り返しています。その間に、有償無償のサイトで克服を目指してきましたが、克服する『方法』は、恐らく無いと思っています。その『方法』を絶対あると信じていましたが、吃音克服とは、このようにすれば治るといったようなものではない。と思います。


  2. 「初めての連絡」までの吃音歴

    27日に連絡しました山桜です。 歳は66です。物心付いた頃からの吃音です。それでも、中学生までは、学校での本読みや、切符買う時、電話以外は、頑張って喋っていました。 成績は常に学年トップクラスであったからか、からかわれたり、いじめられた記憶はありません。

    本格的に吃音克服を目指したのは、吃音ドットコムを見てからです。吃音の科学的な解説にびっくりして、むさぼり読みました。読んだだけで、吃音が不思議に軽くなった経験をしました。(しかしドットコムには、具体的な克服方法は書いてありませんでした) 。読んだだけで軽くなったのだから、これなら本格的に取り組めば、克服できると思いました。

    ネットで知った様々な吃音克服サイトを渡り歩きました。どのサイトも最初の2〜3ヶ月は、期待もあり、改善している気がするのですが、5〜6ヶ月後には、あれっ、何も変わってない。そこで気落ちしても、しばらくしたらまた別のサイトを探す。絶対に克服できる『方法』はあるはずだ。と信じつつ。まるで青い鳥探しです。

    [Hero Coment]
    がっちりと「吃音を治す方法」を書いてあるのですが,山桜さんにとっては発声練習のような言葉に関係が強いような克服方法でないと,「吃音克服方法」と感じられなかったようです.都市伝説の影響は大きく,吃音は言葉の訓練で治ると信じておられたのでしょう.ここから解放されるのもなかなか至難の業なのです.
    吃音は心の病気で,克服するものではなく,治る準備をして治るのを待つものなのです.
    治る治る準備が大切です.



    ● 吃音卒業   (2019/07/30 3年後,69歳)


  3. 今生での吃音克服は無理から卒業へ

    今年の1月末にメール差し上げてから半年以上が過ぎました。 その間、ちょっと良くなったかと思えば、また沈むという事 繰り返していました 5月から6月にかけては、ここ近年で最悪で、ある言葉を出そうとすると 身体が全力で阻止するような感覚になり、 とても今生での吃音克服は無理という結論にさえ達しました。

    ところが7月初めから訳の分からぬまま、言葉が出易くなってしまいました。 ここ20日間弱、吃音(言葉が詰まって出にくくなる、またそれを無理して出そうとする行動)が、 ほぼ消えました。


  4. 卒業直後の確信

    今、一人の人間が吃音から開放されようとしています。 ひと月間経過観察して、以前の調子のいい時と比較して、 次元が違うという感覚がありました。 その後、あれこれ考えて1〜2日 迷いが生まれましたが、ひと月半を経過して これは大丈夫という確信に変わりました。

    突然の大変化の原因をあれこれ考えていますが、正直分かりません。 気が付けば、ただすらすら言葉が出だしたということです。



    ● 卒業2年後(2021/09/02 71歳)の様子


  5. 70歳手前の夏に旅は終わりました。でも30の壁を感じています

    ここまで改善出来たのはヒロさんのお陰です。 ヒロさんのサポートなければとてもここまでたどり着けなかったと思います。 有難うございます。

    その頃は、治した人がいるのだから治す方法は絶対にあるはずだと信じていました。 それからずっとその方法を探す旅に出て、70歳手前の夏に旅は終わりました。 方法は自分の中にあると悟りました。

    今になって自分の吃音を振り返ると、旅を続けていた頃の吃音指数を仮に100としてあの劇的変化で一挙に50になったと思います。その時はもっと低くなったと感じていました。 しかし一挙に半分になったのだから劇的に感じて当然です。

    その後2年間は最高30台半ば迄は行ったのですが、30の壁を感じていました。 やっと30を切れたように思います。 この調子なら20もそれほど困難でない気がします。


  6. 満点に達したと思います

    2週間前に現在の状態を聞かれ、80点満点の70点と答えましたが、わずかな間に80点に到達したと思います。 この数日、家でも外でも殆ど吃音が出なくなりました。 2年前のあの劇的変化が起きた時に、何かが外れた感じがしましたが、 今度はもっと大きなものが外れたようです。



    ● 卒業4年後(2023/3 73歳)の様子


  7. 長い長い本当に長い吃音克服の旅路でした。(2023/3/16)

    終わってみると、どもりを治すことは一生をかけるほどの大事業ではなかったのではないかと思います。 また吃音反応を感じても、冷静に受け止めて対処でき、ほぼ慌てることもなくなりました。今までの自分と別の自分がいます。
    魔法使いに吃音にされた人間の魔法が解けたみたいです。

    夢にも見た世界が現実になりました。

    ヒロさんには永年に亘り本当にお世話になりました。 改善ではなく完全に治ったようです。
    有難うございました。


    [Hero Coment]
    吃音指数50のとき,吃音であったことなどすっきり忘れて人生を邁進すれば,いつの間にか0になっていたでしょう.卒業後のことは旅の余韻のようなものです.吃音トラウマをなくし卒業することが一番大切です.
    それにしても素晴らしい体験談を残してくれました.詳しいことは「4-1」,「4-2」,「4-3」でお読みください.




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